されどわが日々

NIKON Coolpix P900/SONY RX100V オート専門

妄想

 気がついた時にはもうあらかた人はいなくなっていた。ズボンについたホコリをぱたぱたとはたきながら、なんでこんな事をするんだろうとは思ったけれど、おおむねテレビのドラマなんかだと、こんな具合に人通りの多いところで倒れちゃったらしかめっ面をしてこんなことをしているんだろう。

 ちょっと右膝と右肩に痛みがあるような気はしたけれど、ここで立ちどまってじっくり点検したいとは思わない。早くどこか人のいないところに行きたかった。口の中で、くそっ!と一言いってみた。

 やっぱりあれはヤクザものだろう。そうでなければ、こんな細い歩道の上を自転車、それもまるで鮨屋が出前に乗っていくような黒い後ろに四角い大きな荷台がついている自転車で乗り入れたりしないだろう。あ、そうか、ひょっとするとそういう商売なのかも知れない。

 ちょっと先のデパートにいって北海道展を覗くつもりで、ちょっと浮かれてはいた。後ろから何か近づく雰囲気はした。人間は後ろに目がついているわけでもないけれど、そこがまだ動物としての本能が残っているのか、何か感じることがある。自分に見えないところから誰かが見つめていると、その視線を感じるってことだってある。あれは一体どう説明がつくのか知らないけれど、何かが近づくことも、感じることがある。(続く)