されどわが日々

NIKON Coolpix P900/SONY RX100V オート専門

寝付き

 うちの親父は実に寝付きの悪い男で、歳をとっても寝付けないとかでゴルフの前の日なんて、あぁでもないこうでもないと考えると寝られないままで掛けていったりしていたそうです。

 そんな人でしたから仕事に脂ののりきった頃、そうですねぇ、私が小学校低学年の頃ですから、親父も40代後半にさしかかっていた頃、彼は睡眠薬を日常的に服用していたようです。昔は睡眠薬もそんなに規制されておりませんでしたから、ごく普通に薬局で買えていたようで、うちにはブロバリンという白い錠剤が入った緑色の瓶がその辺に転がっていた、というのはウソですが、特別な存在ではありませんでしたねぇ。

 そんな頃、夜中に大きな声で目がさめたら、うちのお袋が「そんならあたしは死んでやる!」と見得を切ってブロバリンの瓶を開けようとしていたことがありました。小学生の子どもが泣いて「お母さん、やめて!」とすがりついたという、どんな修羅場の家庭だったんだろうかという位の話です。

 歳をとってからもそんな具合で医者に処方して貰った睡眠薬を飲んで翌朝ゴルフ場でふらふらだったと、父のお友達から気をつけた方が良いといっていただいたことすらありました。つまり、かなりな小心者だったということでございますなぁ。

 その小心なところはてっきり受け継いでしまいましたけれど、私は引退してからというもの、寝たいときに寝て、起きたいときに起きるという「規則正しい」という言葉とは全く無縁な生活を送っておりますので、寝付きが悪い、ということは一切なくなりました。当たり前ですよ、寝たいときが来るまで寝ないんだから。

 それでも当時は明日の客先でのプレゼンを考えると寝付けなくて七転八倒したりしたものでした。

 今では、寝ようかなと布団に入ってから、もし、ここで宝くじが当たったらどこへどんな旅行をしようか、そのためには何を調べておかなくてはいけないんだろうかと考え始めるとはなはだ愉快に寝付いてしまって、翌朝実に爽快に目がさめます。

 こんなことで長生きなんてしたら、罰が当たろうというものでございますよ。